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(c)りょーちも・ちものとアニメーション
無断で複写・複製・転載・配布など、一切お断りします。りょーちも/ryo-chimo
アニメーター/イラストレーター。ゲーム会社勤務を経て、2004年『BECK』で原画デビュー。『創聖のアクエリオン』(2005年)『かみちゅ!』(2005年)など数々の話題作に参加する中、『ノエイン もうひとりの君へ』(2005-2006年)で見せたアクション作画でアニメファンの注目を集める。同作品の赤根和樹監督による『鉄腕バーディー DECODE』(2008年)とその続編『鉄腕バーディー DECODE:02』ではキャラクターデザイン、総作画監督として抜擢され、大きな話題を呼んだ。2010年にOVA夜桜四重奏 〜ホシノウミ〜で監督・キャラクターデザイン総作画監督を務め、監督デビューを果たした。2013年に夜桜四重奏~ハナノウタ~でテレビアニメでも監督デビューをしている。大胆かつ軽快なアニメーションはもちろん、独特の描線とポップな塗りをもつイラスト作品にもファンは多い。ネットでの創作活動やデジタル技術と親和性が高い、既成概念に囚われないスタイルをもつ“新世代アニメーター”としてこれからの活躍が注目される、若手クリエイターを代表する一人。
りょーちも公式サイト ちものとアニメーション
http://timo-note.com/
PART I
☆アニメ作画に興味を持ち始めたのは、いつからのことでしょうか?
子供の時に見た「アニメ大好き!」でたくさんアニメを見て好きになりました。
☆伝統のアニメ作画法を勉強したことはありますか?
仕事で必要となって、勉強しました。
☆デジタル(アニメ)作画を始めた経緯は?
まだ、仕事をしていない時に、知り合いがweb上でflashを使ってアニメーションを作っているのを見て、やってみたくなったためです。
☆昔のFlashアニメといえば、線が太くてあんまり動かないというのは印象ですね。りょーちもさんたちが作っていたものとは根本的に違うと思いますが…
flashと言うとWeb上での広告の表示用や、簡単なスライドで動かすアニメーション用のソフトというイメージが一般的なのかと思います。使い方はちょっと違う気がします。
☆Flashでアニメを作るなら、まず目に映るのはタイムラインと「スクリーン」だけ、つまりまず意識すべきのは「時間」と「カメラ」ですか?
良い判断だと思います。演技を考える時によく見失いやすいのが時間ですので、1秒間に何ができるか、すぐにチェックできつつ、作画していくのはflashに向いています。「カメラ」というのは画面作りを指しているのでしょうか?リアルな発想だとそうかもしれません。
☆FLASHを使っているアニメーターの中に、タイムライン系の人が多いですか?
多いように思います。すぐに動きが試せるので、タイムライン系になりやすいのかもしれません。
☆時間感覚を身に付けるには、何か必要だと思いますか?
自分で試しに動いてみたり、ロトスコープや、実写の映像をコマ送りで見てみるのが良いかもしれません。
☆作画のときは、絵を描きながら「シートを埋める」のですか?
色々あります。先に全体のリズム感(テンポ)や脳内のイメージの間を作りたい時は先にシートを書いてから絵を描いたりもします。
☆Flashでは、一人で全原画の方法で描くしかないのでしょうか?中割りはできないようですので。
出来ます。同じデータを担当ごとで渡していけばよいです。
☆Flashで線を正確に引くのは難しいですが、絵を描く時にほかのソフトを使っているのでしょうか?
使う時もありますが、基本は全部flashで作るの方が便利です。
☆この前聞いた話ですが、業界ではレイアウトをFlashで描く人が多くなったようです。
よくご存知ですね、ちょっとずつflashが浸透しているのかも知れません。
☆WEB系アニメーターの中に、演出、作画、仕上げ、美術、撮影でもこなせる多芸な人ばかりだと聞いたが、そうですか?それは自主制作出身の人が多い、ということでしょうか?
Web系という言葉が、ひとり歩きしているように聞こえます。元々は「センスは良いが中途半端な形でアニメの仕事をし始めた若造」を指していた言葉だったように思います。Web上に自分のページを持っていて、センスが良いのでオファーされて下積みをあまりやらずに原画を描く流れで、仕事を始める前にその方が何を得意でやっていたかが、その人の出来る特殊な技術になってます。自主制作をしていた方がけっこういるのかも知れません。色が綺麗に塗れる、音楽が作れる、ものすごく色んなアニメの表現をしってる…など商業のアニメーションだけをやっているのが勿体ない人たちが多いのがWeb系の特徴です。
☆自主制作だったら、ほかに何のソフトを使えばいいんでしょうか?
編集ソフトと音楽ソフト撮影ソフトペインティングソフトくらいがそれぞれ必要でしょうか。
☆デジタル作画の流れを少しまとめて教えてください。
アナログの作画と流れは同じように出来るよう作っています。商業アニメの流れをそのままデジタルで行っています。
☆デジタル作画の優位性はどこにあると思いますか?
●動きをすぐにチェックしながら作画できる。
●作画の際に3Dのモーションや、実写の上であっても作画が出来て制御がしやすい。
●データが貯蓄できる。
●遠方の人とのやりとりがすぐ出来る。
●作業者の出来る仕事が増えるので少人数で作品が作れる。PART II
☆りょーちもさんをスカウトした小林(治)さんは、強い個性(絵的な意味で)を持ってる人ですね。もし可能でしたら、当時その小林さんが目に留まれた作品を観て見たいと思いますが、どのような作品ですか?
作品ではなく、私のサイトです。
☆「BECK」を参加したのは、小林さんにスカウトされた直後のことですか?
はい。
☆動画をやってから一年以上、原画試験を受けて原画になる人が多いと思います。しかしあなたの場合では、初参加作品で原画を担当しました。やっぱり制作側の人も、あなたが原画に向いてると考えたのでしょうか?
小林治監督の独断です。
☆最初は完全に紙作業でしょうか?
そうですね。
☆では「BECK」は、「伝統バターン」で完成した仕事ですか?
以前からあるアナログな書き方です。
☆「アクエリオン」はうつのみやさんとの初仕事だと聞いたが、いきなり3Dレイアウトをやらせましたね。その時の業界ではあんまりやってないじゃないかと思っています、3Dレイアウト。
いえ、会社によっては使っていました。
☆3Dレイアウトって、今は多かったですね。多用された理由はなんですか?たとえば作画や演出の人にとって、2Dレイアウトを使った時とは何か違うところがありますか?
基本的には絵作りの補強材です。室内や何回も使われる場所などで使用したりします。キャラクターと場所とのスケールをしっかりさせたり、難しいパースのとり方が補強されたりします。今は2Dでレイアウトを描いて3Dでアニメを作る場合も結構あると思います。それは、構図を重視する時のやり方ですか?
アニメータの技術力が3Dアニメータにまだちゃんと受け継がれていないため、どうしても参考として2Dのレイアウトが必要なのかもしれません。
☆その後、またとんでもない作品(「ノエイン」)を参加しました。リアル系の代表格とも言えるアニメーターさんたちと一緒にお仕事ができて、どうでしょうか?
楽しかったです。脳のイメージをそのまま画面に出す作り方を無理やり味わった気がします。
☆りょーちもの名を海外の作画マニアの間に馳せたのは、ノエイン12話の凄まじいアクションじゃないかと思います。それについて少しお話していただけませんか?
松本憲生さんにまかしてもらい実現しました。描いても描いても、それで良いの?とよく質問されました。線を荒いまま描こうと言ってもらいあのスタイルになりました。本当に良い経験をさせてもらいました。
☆あなたのパートだけではなく、全体的に観ると派手な作画が出まくった一話ですね。あなたのパートを除いてほかに印象的なところはあるのでしょうか?
A パート前半の人達の動き方、フクロウの砕けていく所などです。
☆この時期は松本(憲生)さんに師事したと聞いたんですけど、そうですか?
はい。
☆「時をかける少女」の真琴走り、感情や動く幅の変化、そしてカメラワークが面白いですね。
どもです。
☆あのシーンについて、画面外の部分もちゃんと描いてあるのでしょうか?
一度自分で全力で走りまして、スタッフに横から車で追っかけてもらって撮影してもらいました。全力の走りと違って、徐々に疲れてくる走り方は上半身と下半身のテンポがずれていてちょっとズラして動かしてみたり考えていました。元々は2カットあり、アップのカットと引きで走る全身のカットがありました。色々な都合でアップのみ作りました。
☆「電脳コイル」は、普通に受けた仕事ですか?磯さん、井上さん、本田さんの作画、研究したことはありませんか?
人の作画を研究した事はあまりないです。面白いと思って見た程度です。
☆参加作品リストをまとめてみた時気づいたんですけど、ほぼ作画アニメなので驚きました。仕事を選んだわけじゃないですね(笑)。
結果的にそうなったようです。多分知り合いからのお誘いが多いのでこうなった様に思います。
☆「バーディー」からは、本格的にデジタル作画をテレビアニメに導入したのでしょうか?
実験的にです。自分の範囲で何が出来るか実験していました。
☆デジタル作画においての作監って、普通の作監の仕事とは何か違いがありますか?
大きくは変わりませんが、まずデジタルに慣れるという壁が大きのが現状です。データとして修正したカットがすべて残りますので、修正期間の短いTVアニメの仕事では役に立つかもしれません。Flashというソフトで、30分枠の商業アニメを作るのは無理だと考えた人も多いでしょう。それなのにどうしてFlashをテレビアニメ制作現場に持ち込むと決めたのでしょうか?
基本の作業が動きの制御とカメラワークなのでその両方がコントロールしやすい作画ソフトという条件がかなりソフトの限定になります。残ったソフトの中だと比較的経験値が高いflashは自分の得意分野になってますので使いました。
☆「バーディー」を参加した山下(清悟)さんと沓名(健一)さんがデジタル作画をこなした人ですね。そのような人がいたら作業はもっとうまく進められる、あなたはそれを考えて呼んだのでしょうか?
そうですね。山下さんはデジタル作画に詳しいので呼びました。他の作画スタッフはまだ未経験で誰かが先導してあげないとと思ってました。沓名さんは小林治監督の仕事の際にお会いしています。業界に入る以前から、サイトで上手なアニメを書く人として知っていたので、会えて気さくに話してくれて嬉しかったです。
☆「ノエイン」や「バーディー」などのアクションをやってから、何か結論もしくはそのようなものを導き出したのでしょうか?
作れば作るほど自分の作画の欠点がわかっていき色々悩みが増えました。どうありたい、というのとどう進みたいが、色々と拮抗して迷いながら歩いた道のりです。多分他の人には歩めない、変わった道のりなのだろうなという。感想です。自分は物理現象が好きで、よく実写の爆発やエフェクトの映像を見てました。世界は波で出来ている。とはよくいったもので、物質の現象の固有の干渉によって形作られているのだなーと思いました。
☆「バーディー」と言えば、「DECODE:02」の7話と12話は語らなければならない名回ですね。しかしそれを「作画崩壊回」と認識するアニメファンが少なくないと思います。これについて、あなたはどう思いますか?
アニメータの表現の許容はけして作品の視聴者の感性とは違うという事だと思います。
☆仁保(知行)さん、そして今の藤沢(研一)さんもWEB系出身のアニメーターではないようですが、デジタル作業うまくいったようですね。
2人共苦戦して悩んでいました。うまく行ったように見えたのはその結果が良いものになったという事だと思います。
☆「ホシノウミ」は初監督作で、つまり演出家の仕事をやるということですね。どうでしょうか?
たいへん難しく、表現の自由でなく、表現の制御のに悪戦苦闘しました。
☆鈴木(清崇)さんとコンビできたのは、この時ですか?
前回のOADシリーズの2巻からですね。
☆よくアニメファンの間に語られたことですが、作画出身の演出家とはじめから演出をやってる人の考え方が違うという話です。これについて、あなたはどう考えますか?
違うかもです。アニメが他の実写などと大きく違うのにも当てはまるかもしれません。カテゴリー的な違いで見るとそうなのですが、結局はそれぞれ何を見せたいかの差なので知識に溺れて自己満足のためにだけ作るのはイヤです。
☆演出と絵を動く、どちらがお好きですか?
両方すきです。
☆「ホシノウミ」のキャラデザイン、原作と大部変わりましたね。ヤスダスズヒト先生のキャラもずいぶんアニメ的な感じですが、あなたの絵柄になったら原画を描く時も修正をする時ももっとうまくまとめるというのは原因ですか?
いいえ、自分は他者の絵を上手く再現できないのでこうなってます。ヤスダさんもそれで良いという人だったので実現しました。
☆なんかキャラの性格もキャラデザインのように可愛くなってきた部分がありますね。原作の姫はもっとかっこよく感じですね。
そうですね。強さと弱さ両方見せたくてそうしました。
☆「まどマギ」で岸田(隆弘)さんのキャラを描くのは、二度目ですね。「ノエイン」の時と、感覚的に何か変わったことがありませんか?
相変わらず上手く描けませんでした。難しいですね。
☆今までやった仕事の中で、一番描きやすいあるいは動きやすいキャラは、どなた(もちろんりょーちもさんご本人のを除いて)のキャラですか?
時かけでしょうか。
☆りょーちもさんは作画のほかに、3DCGでもアニメを作れるのでしょうか?
いいえできません。
PART III
☆「ハナノウタ」ファーストシーズン無事完結しまして、おめでとうございます!これはまたデジタル作画を導入した作品ですね。
はい。ありがとうございます。
☆ストーリーは原作とは大部違っていたけど、設定はあんまり変わりませんね。
再度同じ始まり方では前回放送したアニメシリーズの二の舞いなので原作者自ら新しく話を書きました。なのである意味シャッフルされた新シリーズです。
☆1話から作画密度高くて、特に金魚の重量感ちゃんと表現できてますね。
ありがとうございます。作画監督、演出、原画マンに感謝です。
☆アバンの「yamaステップ」、それはバーディーED1へのオマージュですか?
描いたのが本人ですのでこうなりました。
☆3Dを使えば背動描けずに済むのですが、それでも背動にこだわっているのでしょうか?
ものによります。絵のもっている存在感は今のところ3Dでは出ないようです。
☆第1話を参加した人の中に、作画が一番松本さんらしい人は、藤沢(研一)さんですか?
そうですね。7話のBパートのバトルもかなりそうです。恐ろしい男です。
☆2話Bパートのアクションと天から地上まで伸びる黒い手のところはうまいと思いますが、そこはどなたが担当したのでしょうか?
林祐己さんがアクションをされたと聞いてます。
☆6話って枚数1万枚を超えたデジタル作画回ですが、その中にエフェクトに使った枚数は結構多いですね。
多いです。正確な枚数は忘れました。失礼。
☆吉原(達矢)さんが演出を担当した第9話、作画ほとんど新人さんですね。驚きました。
少人数で作っています。すごい連中です。デジタル作画で挑んだ方もいらっしゃいましたが、連携の方法をまだうまく伝えておらずレクチャーの必要性を強く感じました。
☆9話のストーリーはOADを観てない人にとって、いきなりわからなくなっちゃったような…
ニコニコ動画で放送という作りなっておりちょっと海外の放送をうまくコントロールできてなかったように思います。すみません。
☆オープニングはOADブルーレイ版ハイライトのような形で作りましたか?
再編集して作りました。
☆坂詰さんはこの前に放送した「波打際のむろみさん」で面白い走りを見せましたね。業界に入ったばかりの新人さんですか?「コラ職人」と呼ばれるようですが。
そうなんですね。
☆なんか「ハナノウタ」が新人育ちのために作った部分があるとうすうす感じられましたね。制作中には、松本(憲生)さんのようなベテランアニメーター、りょーちもさんのような第一世代のウェブ系の人が、新人さんを指導しているのでしょうか?
指導しているというより、結局見て学べ。に近い内容になっています。個人が研究した事が絵にでるので、相互で刺激しあって出た結果が大きいと思います。
☆第1話と第11話とも、山下(清悟)さんの演出回ですね。アクションはともかく、日常シーンもうまくまとまったという感じですね。
彼は本当に多才です。すごい人物だと思います。
☆第12話、松本(憲生)さんと高瀬(智章)さんの二人作画・演出回ですね。この二人の方で12話を作ると決めたきっかけは何ですか?
松本さんのスタイルです。彼は作品を手掛ける際に誰か新しい人を入れて刺激的な話数を作ります。
☆高瀬さんは芝居が得意ですか?
上手ですね。
☆第13話は最終回で、ボス戦はApartだけで完結しましたので、なんか終わりという感じはしませんね。しかし最後は華やかに雰囲気で、とても良かったと思います。
ありがとうございます。
☆りょーちもさんは監督と作画監督のお仕事に専念していて、原画をやってなかったのでしょうか?
ほとんどやってません。修正で全修の時をのぞいて。
☆最後にこの仕事についての感想をお願いします。それと、何かやり残したことがありますか?
新しい挑戦になったと思います。何をすべきか色々見える仕事になりました。
☆これから何か新たに挑戦したいものがありますか?
あります。まだ恥ずかしくて言えません。
PART IV
☆3D技術の進歩によって、今各国アニメに3DCGが広く運用されています。その影響で、中国でも「3Dアニメーター」が多い傾向になってきました。3Dは今後の主流になるのかについて、あなたはどう思いますか?
なると思います。もっと2Dとの馴染みがよく使いやすいものへと変わっていくと良いと思います。
☆あなたの見方によって、アニメーターになる前に必要な素質は何ですか?
コミュニケーション能力への関心と、忍耐力と絵への関心。
☆アニメーター志望の人に、見るべき本と作品をお勧めしてください。
本:梨木香歩の小説。作品(アニメ):たのしいムーミン一家。
☆最後はファンとアニメーター志望の人に一言をお願いいたします。
絵に執着しつつも、色んな目線でものが見れる人になってほしいです。